of birth

一ばん星の歌

(1956〜1957)
■ 少女 中編
(全245ページ)
■ 杉野美紀と一枝は仲のよい姉妹だった。お父さんがブラジルの移民船に乗って旅立ったため、二人は父の親友である有川一郎の家に身を寄せることになった。有川には三郎という息子がいたが、ある日たばこの火の不始末で、火事を出してしまう。ところが、逃げ遅れた姉妹を、身を挺して助け出したのはその三郎だった。一方ブラジルに向かった杉野の船は、他の船と衝突し、杉野は海に投げ出されてしまう。 そのことをニュースで知った姉妹は悲嘆に暮れる。姉妹の母は、歌手の葉山珠美だったが、かつて彼女は家庭を捨て、仕事を選んで家を出たのだった。それ以来、男手一つで育てられた二人にとっては、かけがえのない父だったのだ。 二人を元気づけようとした三郎は、二人に内緒で「アベック歌くらべ」というラジオ番組に応募してしまう。そこには審査員として葉山珠美の姿があった……  後に『東京の青い空』にも登場する「かための虎」という、正義感に満ちた強い男が登場するが、こちらの話では命を落とすことになる。
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